フィンテックをあらためて読んでみた。
フィンテック
2016年発行、著者:柏木亮二氏
2016年発行、著者:柏木亮二氏
もう4年も前の発行のものになりますが、新書の200ページくらいの中にありとあらゆるフィンテック界隈の知識が盛り込まれていて、しかも一つ一つの情報が明解に書かれている素晴らしい本です。
今となっては銀行内のIT改革も進んだそうで、数年前とは比べ物にならないほどサービスが便利になりました。(近年よく銀行が不定期に土日ATMを止めたりしていましたが、システムの入れ替えが大変だったんでしょうね。)
その背景には、この本で示されているような「破壊的なイノベーション」に企業がさらされ、後に引けない変革を迫られていたのだということがよくわかります。
本の概要
近年起こっている、金融業界を揺るがす新しい技術を整理しながら認識し、既存企業が生き残るにはどうしたらいいかを提案する。
フィンテックとは・・・
を掛け合わせた造語
新しい金融技術とは・・・
- 本人確認=KYC(Know your customer)の規制が強化されてきたため・・・・
→Trunomi/CONTEGO(本人確認用の顧客情報シェアサービス) - お金のやり取りを安全に行う必要があるため・・・
→ApplePay、FIDOアライアンス(生体認証の技術標準化団体) - 支払いをより簡単に・・・
→SUICA、LINEPayなど(電子マネー)、Paypal(オンライン決済)、Square(モバイル決済) - 個人の様々なお金のやり取りを管理するため・・・
→マネーフォワード、zaim(個人資産管理モバイルアプリ)
銀行の機能が新しいサービス会社に置き換えられている・・・
- 資金決済:銀行口座振込→Paypalなど
- 資金集め・投資(小口):銀行融資→クラウドファンディングなど
- 海外送金:口座間の送金→Transferwizeなど
従来の企業が新しいイノベーションに立ち向かうには
【価値基準を変える】
利益率、シェア、市場成長率、顧客満足度に価値を置く⇒破壊的なイノベーションを生み出すことに価値をおく
【プロセスを変える】
顧客ニーズ、利益、株主を優先としたプロセス⇒失敗、損失を許容し、素早い意思決定を行える組織体制
実際には・・・
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外部組織の買収
外部組織の価値基準とプロセスを手に入れる。自分たちの組織の価値押し付けはNG
(過去の例:買収した会社でネクタイ着用を義務化→社員の離職率増加) - 組織の意識改革
自分たちの組織の価値基準とプロセスを変えていく。
懸念点:既に成功している価値基準とプロセスを捨てて大企業を維持するのは困難 - 新たな別組織の設立
破壊的イノベーションに適した価値基準とプロセスを新たに別組織として持つ
金融業界の話、と思いきや、根本的なところは他の業種も同じ問題を抱えているな、と改めて思いました。
むしろ金融業界は持っている資源が現金、銀行店舗、従業員くらいですが、既存の工場や設備などを大量に抱える製造業などは、かなり動きが鈍くなっていて当然だと思います。
そのせいか、他業種ではいまだ変われていないところが多いように感じます。
企業に勤める個人個人でも、時代の流れを常に感じながら、所属する企業の体質にとらわれずに、どうしていくべきかを自分で判断する必要があるなと考えさせられました。